仮設ゴンドラの現場で生きてきた25年の話

仮設ゴンドラの設置――。
これが、私が26歳から長年続けてきた職業です。
外壁工事、タイル、シール、看板など、さまざまな業種がゴンドラに乗って作業をします。
しかし、ゴンドラはあくまで“仮設”。
正しい知識と安全意識がなければ、簡単に命を落とす危険な作業でもあります。
この記事では、私が約25年この業界で経験してきたこと、そして実際に起きた事故の背景について書いていきます。

■ 仮設ゴンドラの仕組みと危険性
仮設ゴンドラは、ビル屋上の基礎や躯体に自在フックを挟み込み、そこに8mmの吊りワイヤーを取り付けて吊り下げます。
しかし、今回の事故のように片側が外れて落下するケースは、
設置専門業者ではなく、作業員自身が移設(盛替え)しながら作業していた可能性が高い と分かります。
なぜなら、専門業者なら自在フックを完全に落とすような設置は絶対にしないからです。
必ず落下防止ワイヤーでフックを固定し、外れても1m程度しか落ちないようにします。
1m落ちればゴンドラは片側が急に下がり、斜めになります。
そのため、作業員は必ず 人間用の命綱(ライフライン) に安全帯を接続する決まりになっています。

■ 安全帯を付けない「慣れ」が命取りになる
ゴンドラ作業に慣れてくると、危険感覚が薄れ、安全帯を付けずに作業する者が出てきます。
そして、そういう者が落下して死亡します。
これは昔も今も変わりません。
安全意識が麻痺した瞬間に事故は起きます。

■ 私が経験した“振り子状態”のゴンドラ
25年も従事していると、さまざまな事故に遭遇します。
• 片側フックが外れる
• 丸環が飛んで台付けワイヤーが滑走
• ゴンドラが垂直に近い振り子状態になる
私が責任者として担当した現場では、片側が1mほど下がった程度で済みましたが、他の者が担当した現場では完全に振り子状態になったこともあります。

■ 無理な乗り方が事故を招く
設置が完璧でも、乗る側の行動で危険度は大きく変わります。
• 3.6スパンのゴンドラを横方向へ無理に移動
• パラペット付近で不自然な動きをする
• 横方向の力を自在フックにかける
自在フックは横からの力に弱く、簡単に転倒します。
また、吊り芯が合っていない状態で上昇すると、突梁が倒れたり自在が外れたりします。
仮設ゴンドラは“仮設”である以上、無理をすれば事故が起きるものです。

■ 起動台車の危険性とワイヤーのキンク事故
屋上レールに設置する起動台車(ビソー製やコーケン製)も、構造を理解していないと危険です。
特に怖いのが ワインダー内でのワイヤーのキンク(ねじれ)。
捻じれたまま巻き取られると、ワインダー内部でワイヤーが噛み込み、ストランドが摩耗して切断します。
実際に私は、
4ストランド中3本が切れ、残り1本だけでぶら下がっていた現場
に緊急で駆けつけたことがあります。
作業員は命綱で助かりましたが、宙吊りのまま救助を待つことになり、腹部に強い衝撃を受けていました。


ネットから切り抜き 見本です。

 

■ この仕事は“向き不向き”が極端に出る
この業界には、向かない人が一定数います。
そういう人が従事すると、必ず事故が起きます。
私はこの仕事が適職でしたが、それでも神経は張りっぱなしでした。
実際、命がけの仕事です。

■ 腰を壊す職業病
年齢制限はありませんが、実質的には40代までの仕事です。
• 30〜35kgの自在フックを何本も担いで屋上へ
• パラペットまで持ち上げて設置
• 若い頃は60kgの自在フックも一人で荷揚げ
若い頃は無理がききますが、積み重なると引退後も腰痛に悩まされます。
私もその一人です。

■ 最後に
長年従事していた会社はすでに消滅し、私が最後の職人でした。
今となっては、当時一緒に働いた仲間たちもほとんどいないでしょう。
危険と隣り合わせの仕事でしたが、誇りを持ってやってきました。
この記事が、仮設ゴンドラの危険性や現場のリアルを知るきっかけになれば幸いです。